運転の極意

 昨日に引き続いて、免許更新講習のお話です。

 更新講習の際に、まず必ずと言っていいほど、ビデオを見せられますよね。
 まああの三文芝居と、「速度を落としさえすれば安全」的な通り一遍の内容には、常々辟易していましたが。

 前々回か、あるいはその前くらいなので、もう10年以上前のこと。
 いちどだけ、驚愕のビデオを見たことがあります。

 いきなり出たタイトルが、うろ覚えですが「中嶋悟の安全運転テクニック」。
 タイトルにある中島悟とは、言うまでもなく日本人初のF1パイロットとなった、元レーサーのあの中島悟氏。

 まさか更新講習のビデオに、そんな大物が出るのか?と驚いていると、内容がさらに驚きで、中島氏が街中や高速など、様々なシチュエーションで実際に車を運転しながら、助手席のディレクターがそこでのポイントを尋ねる、というもの。

 さすが中島氏、と思ったのは、たった一カ所を除いて「速度を落とせ」とか「ゆっくり走れ」とは言わなかったことです。

 その代わり、それはもうくどいほど繰り返して言っていたのが「よく見ること、よく確認をすること」でした。

 街中での交差点然り、高速道路の合流点然り、見通しの悪い一時停止然り。
 ディレクターに「中島さん、ここでのポイントは?」と聞かれるたび、「ここもよく見ること、きちんと確認することです。」と繰り返していたのが、印象的でした。

 もう一点、夕暮れ時のライト早め点灯についても「こんなに明るいのに、もうライト点けるんですか?」という問いに自車を目立たせることの大切さも力説していました。

 で、ただ一カ所「速度を落とせ」と言った場面は…
 『人通りで混雑している狭い商店街のアーケード』でした。(笑
 これは常識ある人間なら、アクセルを踏めないでしょう。
 氏も「これはさすがに速度を落とすしかないですよね」と苦笑していましたが。

 まあ言ってしまえばどれも当たり前のことなのですが、プロ中のプロが言うだけに説得力あり、これ以降、確認することを意識して運転するようになりました。

 たまにこんなまともなビデオも流すのだなあ、と、感心したものですが、あれ以来の講習では、こんな実践的なビデオは流されず、また三文芝居ものに戻ってしまったのが残念です。(笑