浮かぶ神社

 新得町にある十勝ダムの中、まさに水の上に、謎の建物が建っています。

ご覧のように、鳥居と社殿があって神社のようですが、どう見てもここ、船でしか行けません。

 以前からその存在は知っていましたが、なぜダムの中に神社があるのか、謎でした。

 ズームしてみると、コンクリートの基礎があり、けっこうしっかりと建てられているようです。

 ダムができた時に、水神様を祀るために建てたのか、はたまた、この下にはかつてあった集落が沈んでいるので、その社を移したものか。

 十勝ダムや、管轄する開発局のホームページにも、何も情報がありませんでしたが、さらに調べると、やはりダムに沈んでしまった、貴名牛(キナウシ)という集落にあった「貴名牛神社」だそうです。

 貴名牛集落は、昭和21年の戦後開拓で入植が始まり、冷害や十勝岳噴火などの災害に見舞われながらも最盛期には十二戸の開拓農家があったそうですが、ダム建設により、わずか30年でその歴史を閉じてしまいました。

 神社は昭和24年の建立だそうですが、昭和37年には小学校の分校として使われていた歴史もあるそうで、ダムが建設された昭和48年に廃止され、その際にダム周辺の安全を祈願して、現在の神社がこの岩の上に建てられたそうです。

 よく見ると、近くまで道らしきスロープ状のものもあるので、水位の下がる夏場などは、陸路でも行けるようですが、基本的には船でしか行けません。

 ただ、画像を確認すると、さほど寂れている様子ではないので、定期的に手入れされているようですね。

 北海道は、見落とされそうな開拓の遺跡が残っているものですが、これもそのひとつと言えるかも知れません。