不思議の巣箱

 「電動のドライバーって使えます?」と、
 とある筋(どんな筋だ)の方から、唐突に訪ねられました。

 使えるどころか、業務で使うこともあるので、持ってもいるのですが。

 何かと思ったらば、巣箱を十数個組み立てて欲しいとのこと。
 材はホームセンターで、切り出しまで頼んだそうだが、組み立てまで依頼すると、時間が足りないので、組み立てをして欲しい、という話でした。

 いやまあ、やってくれと言うなら、それくらいやりますが。

 頼まれたそれは、実に簡便なつくりで、材も失礼ながらずいぶんと安っぽく、反っていたり、割れていたりも多い。

 材料費をケチったのかな、と、思いましたらば、そこには意外な理由があったのです。

 これは、鳥の巣箱ではなく、モモンガのためのものだそうで。

 鳥と違って、爪を立てて木に登り、巣箱に入るため、まっすぐできれいな材だと、入りづらいので使ってくれないのだそうです。

 そして、鼻もいいので接着剤の臭いは厳禁で、きれいな合板や市販の鳥用の巣箱を使えない理由もここにありました。

 なんでも生態調査のためだそうですが、どこでどんな調査のために使うのかは、聞くことができませんでした。

 でも、この巣箱へ出入りしているモモンガを想像すると、ちょっと楽しいです。